英語ではartにはskillという意味もあり区別する理由はありません ( No.19 ) |
- 日時: 2018/09/17 21:43
- 名前: ヘルパー4級 ID:23bKqkg2
- artはskillです。
https://www.merriam-webster.com/dictionary/art
Notes on Nursing は著作権が切れているのでチラ見しましたが、確かに skill の単語は1つも使われていませんでしたが、1974年版にナイチンゲール看護学校の学長が本の前書きに "the book astonishes one with its relevance to modern attitudes and skills in nursing" と絶賛している位なので、skill ではなく art だ、という主張は否定されます。学長が『看護覚書き』の内容を skills だと言っているので。
art と skill には、用法として違いが無いわけではないですが、単純に skill を集大成したものが art だとも言い切れないです。厳密に art か skill かを論じるのであれば、1860年かそれ以前の英国の医療分野で art がどういう使われ方をしていて skill とはどう違うのかを調査しなければいけないので、そう簡単には論じられないと思います。
それでナイチンゲールが art の単語を選んだ理由は、ナイチンゲールではないのでわかりかねますが、医療に言及して使っているので、 Art is long, life is short. から採ったのでは、と個人的には思います。これはラテン語の Ars longa, vita brevis. が元で出典はギリシアの医学者ヒッポクラテスの言葉、ラテン語の ars はギリシア語のテクネーに相当し、ここでは医術の意味だそうです。 https://www.kitashirakawa.jp/taro/?p=1843
つまりナイチンゲールは Art is long, life is short の意味を正しく知っていたのではないか、との仮説です。この諺はしばしば芸術作品は後世まで長く伝わると間違った理解がされますが。
私はかねてより看護師の人達の「ナイチンゲール崇拝」には辟易していまして、「看護はナイチンゲールが始めた宗教ではなかろうに」と思っていたので、masa さんが看護覚書きをバイブル扱いしているのは非常に驚きました。そこまでして介護職が看護師のイマイチな点に従わなければならないでしょうか。看護覚書きは、幾ら何でも古過ぎです。高齢者を1860年の医療常識でケアしたら大変です。
ナイチンゲールのやった「功績」というより「功罪」も判断が難しいです。なにせ病気(の多く)は病原菌が原因で起きるという事が一般に知られる前の時代に「良かれ」と思ってした事なので。美化&脚本されまくりの伝記を真に受け白衣の天使と英雄扱いするのではなく、客観的に真実に目を向けるべきだと思います。
『ナイチンゲール 神話と真実』に記述がありますが、実際は彼女が責任者だったスクタリの病院での異常な死亡率の高さは赤痢や腸チフスが蔓延する不衛生な病院に怪我人を移送したために8人中3人の割合ですぐに死んだ、戦場の簡易診療所の方が死亡は8人中1人と生還できる見込みが高かったというのを彼女自身が戦後に分析しています。横浜の某病院の看護師みたいに悪意があったわけではないとしても、結果的にナイチンゲールの病院で死んだ5千人の多くは死なずに済んだ筈の人だったので、死なせた数は桁違いです。この「大失敗」の反省を元に「看護覚え書き」が書かれているのだから感慨深いです。つまり、いわば「スクタリでこういう事をしなかったら五千人も死なせちゃった、みんなは家で病人を世話する時は気をつけてね」という事です。
ナイチンゲールについて語る場合は『ナイチンゲール 神話と真実』は必読でしょう。非常に取り留めのない書き方で全体を読まないと内容が把握できないので困りますが、ごく一部を紹介します。(p.122)
一八五四年から一九五五年にかけての冬に衛生状態の悪さで五千人もが死んだのはフローレンス・ナイチンゲールが拠点としていたスクタリの病院だった。衛生委員会が来る前の一八五四年十一月から一九五五年三月のあいだにナイチンゲールが管理していたのは病院と呼べるものではなかった。そこは死の収容所だった。
借りて読む時間が無い場合は概要だけでもこちらからご覧ください。いずれにせよ、私はナイチンゲールの信者にはなりません。 https://washimo-web.jp/Report/Mag-Nightingale.htm
個人的な考えとしては、技術の分野ですと最新の資料や文献は英語でしか得られないので読むしか無い場合が多いのですが、日本の「介護」に相当する洋書は皆無です。よって日本の「介護」は独自に発達した概念・職種であり、他国では「看護は介護を含む」「介護は看護の一部」という考えが主流では。介護福祉士も、Certified Care Worker という訳語をあてていて、これで外国でも理解はされるでしょうが、この単語は米国では全く用いられていません。ポジション的に一番近いのは Certified Nursing Assistant になります。医師や看護師の指示で働く看護補助のようなものです。それで言うことが完全に矛盾しているようですが、看護師から上から目線で見られる事があるのは看護補助の域にも達していないのに理由があると思います。日本で医療職ではない介護職がどの程度、医療知識を勉強すべきかは各人で考えがあると思いますが、これだけ医療が進み高齢者の医療依存度が高くなって喀痰や経管栄養などは介護職にも、という時代ですし、例えば「自分が糖尿病患者になったら悪化防止のためにどんな食事・運動・注意をするか」と考えて医師が書いた糖尿病の良著を何冊か読み、その知識を高齢者のケアに役立てる、その次は腎臓病にも手を広げ、といった事は続けていかなければならないでしょう。
余談ですがこんなニュースも:「無資格者たんの吸引か 医師逮捕」 https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20180917/1030005061.html
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